(ほしゆきえ1999年9月)

満月の夜、
私は、月に惑わされる。

その光を躯にうけて、
ひろげたあなたの腕の中へ
躊躇いも見せず、忍んでみる。

惑わしているのは月なのか、
光をうけてる
私なのか。

やがて光は私をすり抜け
あなたの先を照らしゆく
光が通った道筋に
影をゆっくり落としつつ

その影を、
ひとつひとつ拾い集めて
そして新月の闇を創ろう。
闇が夜を支配した時、
私の月が在らわれる。

光を持たないその月を、
見つける術を持つものは、
私の闇を解き放つ
同じ記憶を持つ者と
私を光に導ける
満ちた月のなかに棲む
翼を持った兎だけ。
北の詩人とその調べ
ほしゆきえ