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太陽光発電の寿命と太陽光発電所
(太陽電池の寿命と経年劣化・異常の発見方法)

浅川太陽光発電所
所長 浅川 初男

 太陽光発電を始めてから15年を経過してみて、太陽光発電ともに色々な体験をすることにより、太陽光発電のメリットやデメリットがわかるにつれ、これからの産業として発展して行くために、必要不可欠な要点が沢山あることに気付きました。太陽光発電に関わる者として、これからの産業(太陽電池産業)として発展して行くために記します。

 当初、太陽電池は限られた分野で使用する物に限られておりましたが、我国では、自国の天然資源からエネルギーの自給がのぞめない状況に有ることが、技術の進歩から明確にされ、海外からのエネルギー輸入にも国際情勢不安や、第一次オイルショック、第二次オイルショックと度重なる変化から安定した供給がのぞめない状況が現在も続いており、エネルギーの安定確保が望まれています。これらの背景から、我国で自給できるエネルギーとして、太陽光に期待が高まることになります。オイルショック後、「新エネルギー技術研究開発」通称「サンシャイン計画」が始まりました。当初は、太陽熱利用でしたが、

1986(昭和61)年に四国の愛媛県西条市に、電気事業用1MWの太陽光発電所を建設し、太陽光発電所を駆動させ、実際の発電による影響などを検証した。

この施設の実証研究が終了すると同時に、ここで使用された太陽電池の多くは、各大学等の研究施設で使用され、現在の太陽光発電の発展に寄与しました。

私どもの「浅川・大友(山梨自然エネルギー発電株式会社)第2太陽光発電所」にも、この時の実験で使われていた太陽電池を見ることができます。


(写真 3074・3075)

この太陽電池は、製造後20年以上を経ていますが、その性能はほとんど落ちていません。しかしながら、多結晶タイプのモジュール1枚に原因不明の損傷が発生し、調査したところガラス表面にマイクロクラックがあり、マイクロクラックがクラックに発展し、強化ガラスが破損したと推測されます。

構造上の問題点は、このくらい長い時間が経過しないと現れないものだと思っていたならば、ある意味頻繁に発生していることが判明致しました。

その他にも、技術的知識の不備や、製造に携わる作業者の熟練度等から発生する場合もあり、この点に付いての見解を太陽電池製造メーカーに問い合わせた時のやり取りです。

注意その1 製造過程での技術的要因
これは、太陽電池の表面現象(見え方)についての、ある太陽電池製造メーカーと、浅川太陽光発電所とのやり取りの記録です。

・・・・・ 太陽発電事業部 殿

貴社の太陽電池パネルをOEM供給で使用していますが、このような症状を他社の製品では、あまり経験することがありませんでしたので写真を数枚添付致しますので、おきている現象についてお知らせください。


(写真 2864・2833・2866・2846)

15年間太陽光発電を実施してまいりましたが、電力供給点での発熱による現象にしては、位置が違い、並列パネルの中でも現象が起きるパネルと、起きないパネルがあり、これも不思議でなりません。

現在、この発電パネルの稼働効率は他社のパネルと並列されており、14%から18%で、高効率で発電を続けています。

設置後2年を経過して、発電状態には満足しておりますが、この現象は当初から発生しており、天候が曇っている場合や、発電開始時又は終了間際にこの現象を確認致します。晴天日には、発電開始からまもなく消えます。

これも不思議です。

浅川太陽光発電所
所長 浅川 初男

上記の問い合わせに対して、昨年(2008)、問い合わせた回答が本年、2009年2月27日に返信があり、その内容に驚きました。

以下送信文と回答。

浅川太陽光発電所
所長 浅川初男様

 拝啓、時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

私は・・・・(株)・・・・・ 営業部 太陽光発電システム営業課の・・と申します。

日頃は、弊社製品をご愛顧賜りまして厚くお礼申し上げます。

早速ですが、お問い合わせ賜りました件、下記の様にご回答させていただきますのでよろしくお願い申し上げます。 

尚、ご回答が大変遅くなりましたこと深くお詫び申しあげます。    敬具

<記> 

Q1.このような症状を他社の製品では、あまり経験することがありませんでした、写真を数枚添付致しますのでおきている現象についてお知らせください。

<ご回答>

  ご送付頂いた写真より「ガラスの青やけ」現象と推定いたします。

「ガラスの青やけ」とは、水分がガラス表面に付着する事によって、ガラス中の成分が表面に溶け出し、ガラス表面に薄い膜ができ、ガラスが青色や虹色に変色して見える現象で、太陽光の反射角度によって、他の色に見えたり、見えなくなったりします。

ガラス業界では、一般に認識されている現象で、ガラス材料自体の性質によるものであることから、他社の太陽電池パネルでも発生する可能性はありますが、ガラス表面の薄い透光性の膜であるため、出力への影響はありません。

現象の詳細は、下記HPをご参照ください。

http://www.nsg-ntr.com/column/g_univ/univ07.html

Q2.並列パネルの中でも現象が起きるパネルと、起きないパネルがあり、これも不思議でなりません。

<ご回答>

太陽電池パネルの「青やけ」は、その発生のメカニズム(長期間の水分の付着)から、設置した状態での発生はないと考えられ、設置前に発生した可能性が高いと考えます。

例えば、
・雨にぬれた後、倉庫で保管した。
・屋外でしばらく放置保管した。
等、ガラス表面に水分が付着した状態で保管した場合等に、まれに発生することがあるようです。

太陽電池パネルは、通常は積層(重ね横積み)保管されるため、濡れ具合が例えば上層と下層で異なり、保管状態の違いから「青やけ」の発生の有無、具合が異なることが考えられます。

Q3.この現象は当初から発生しており、天候が曇っている場合や、発電開始時又は、終了間際にこの現象を確認致します。晴天日には、発電開始からまもなく消えます。
これも不思議です。

<ご回答>

Q1.でも記載しましたが、太陽光が薄い表面薄膜にあたって虹色に見えているため、見る角度により見えたり見えなかったりします。したがって、同じ位置から見ているときは、太陽の位置により見えたり見えなかったりします。

以上が、回答文で、「ガラスの青焼け」とするこれらの現象に付いては、ガラス製造過程の不備に見られる現象で、このメーカーが、製造販売する以前より、太陽電池を知る私には、全く見当違いの回答に等しいものでした。

ガラスの特性を理解している方ならば、全く違う事が理解できるはずです。

私が受け取った、太陽電池には、Q 1、Q 2の回答は全くあてはまるところはなく、もし、OEMの会社が、太陽電池を回答のように扱っていたとしたならば、信じられない事で、世界的の信用問題に発展いたします。確認のため後日、太陽電池を保護するシート(EVフィルム)メーカーに確認したところ、上記の回答とは全く違う、回答をうかがう事が出来ましたので、紹介させていただきます。

浅川太陽光発電所の調査結果としましては、今回の、太陽電池で起きている現象は、セルに配線をプリントした後の洗浄不足か、EVフィルムの重ね合わせ時に、静電気防止の為に使用した揮発性の薬品の気化が、完了していない状態での、ラミネートにより発生したものと思われる。

前に、当初、この現象(稲妻状のシミ)が発生した時には、私どもの旧団体、太陽光発電普及協会で問い合わせした時は、静電気の仕業で、問題無しと、今回のメーカーから回答がありましたが、私共の調査の結果、製造ライン上の問題点が浮かび上がりました。通常フィルムなどを拡げる場合は、静電気の発生を防ぐために、巻き取ってあるフィルムに静電気除去装置を取り付けて、広げる事で摩擦により発生する静電気を除去するのが通常の対処方法です。

しかしながら、本製品に関しては、静電気の発生を抑えるために、静電気防止剤を使用した事により、フィルム間に、防止剤が閉じ込められたと思われる現象を確認できます。設置方法が上下対象に設置してあるので、薬品が流れた後と見られる様子を容易に確認する事が出来ます。


(写真 2838・2833)

問題発覚後、製造ライン上の問題も解決し、現在では正常な生産工程になっているようです。

今回の、メーカーからの回答は、あまりにも技術認識の低い回答で驚きました。

現地調査を実施するように求めたつもりですが、受け入れられず残念です。

残念ながら、お客様相談窓口がマニュアルに従い、回答をしてきたものか、技術部と相談したが解決済みなので安易な回答文を出したと推測できます。

これらの現象は、浅川第5太陽光発電所を見学する事により確認できますので、浅川太陽光発電所の見学時に、メーカー説明による「ガラスの青焼け現象」を実際体感できますので、御確認ください。

これからの太陽電池産業の育成に役立つように、一つの警鐘として、壊れるまで展示して行く考えです。

また、各専門分野の学識者に協力を求めて、引き続き調査を続行致します。

(ガスマトを使用すれば、封印されている成分は確認できるそうです)

また、このような事は、しばしばあるのですが、対応の早いメーカーや、屋根の上にあるので、見えないだろうと考えるメーカーがある事も確かですが、それなりに、対応しているのが普通ですが、性能が良い太陽電池でしたので、残念です。現在は、私どもと取引のあるメーカーは、前もって情報を提供するか、不具合のあったものは、すべて交換するかが、取引の条件となっております。

また、代理店希望や取引希望の太陽光発電システム設置業者に対して、代理店契約時に、違約金を積ませ、そのかわり仕入れ価格を引き下げて引き渡す様な風潮を仕向ける事により、クレームを処理しようとするメーカーの意図が見られ、これからは注意が必要です。太陽電池システム販売代理店は、これらに縛られ、消費者に販売する価格を下げる事が出来ない現象が起きているのも事実です。現在の太陽電池設置後の、太陽電池システムの10年保証は既に古い市場感なのです。

PV Japan 2009 では、太陽電池の保証期間は25年が発表されていましたので、システム保証の10年をセールスポイントとして使用しても、保証内容からすると、あまり意味の無い10年保証になりつつ、あるのです。

注意その2 太陽電池販売後のケアー・設置後のケアー

私共と、取引のあるメーカーや、代理店等は、頻繁に太陽電池の情報交換をしております、私共から発する物と、太陽電池メーカーやその他の取引先から提供される物とがあり、情報内容は多岐にわたります。

それらの情報交換から、得られた実体験からお知らせいたしますと、如何に早く、太陽電池の異常に気づくかが問題となり、日頃からの発電量の記録や、点検が重要なポイントになることがわかっています。

毎日の、天候と、太陽光発電システムの発電量を記録し、保存しておきます。月ごとの発電量の変化も記録しておき、年間変化を知る事により、季節変動を知る事が出来ます。初年度の記録と次年度の記録を比較できるように記録しておくと、異常の発生を発見しやすく、データとしての活用が出来、不具合を比較する事が容易になりますので、データ取りをお勧めいたします。

一般の方が、太陽電池メーカーと直接のやり取りを行うのは難しいと思われますが、今回紹介している様な、お客様相談窓口もありますので注意が必要になります。出来るだけ太陽光発電システムの知識を高める努力を行い、疑問点は関係機関に問い合わせるのも必要になるかも知れません。その時に説明をしなくてはなりませんので、起きている不具合現象を的確に伝える為に、購入者側も、太陽光発電システムに関して知識を高める努力が必要になります。

太陽光発電システムは、電気という物を作り出していますので、必ず作り出している電気の状態を確認する事が必要であるとの認識が必要なシステムです。

それと、太陽電池の外観からの目視による点検も必要になります。

初期の太陽電池に多く発生したのが、太陽電池の表面にある酸化皮膜の剥離現象です。ここで二枚の写真3067と3077を紹介致します。


(写真 3076・3077)

これは、どちらも同じメーカーから供給された太陽電池ですが、製造工場が違い、全く同時期に生産されていながら、太陽電池表面の皮膜が酸化し、剥離して行く過程が見比べる事が出来ます。3067は海外工場で生産されたもので、3077は国内工場での生産品のようです。また、先ほど紹介したEVフィルムの間にガスが発生した場合は、写真3078のようになり、このような剥離が発生します。


(写真 3078)

これは、主に太陽電池の表面の洗浄不足か、EVフィルムの焼き付け温度に関係して、ガスが発生し、長い間にこのような状態になり、最後は電極部分でショートし、ヒートスポットが発生して、表面の強化ガラスが熱膨張により、ひび割れます。ヒートスポットは、太陽電池の裏側に黒く焼けこげた跡が見る事が出来ますが、屋根の上に乗っている場合は見る事は出来ずに、強化ガラスの表面に錆び付いた様な茶色の焦げが発生します。さらに、症状が進むと、熱膨張により強化ガラスが破損します。

ここまでのタイム時間は、5年から15年かかっています。

また、太陽電池の使用条件次第では、同じ様な事が発生致します。

通常200V付近で使用する太陽電池を、300V付近で使用したならば、発電効率や、直流から交流への変換効率が上がるので、120枚の太陽電池で実験したところ、10年付近から太陽電池の異常を見る事になり、熱膨張による強化ガラスの破損に巡り会う事が出来ました。この実験を計画した時に、太陽電池供給メーカーと、使用条件に対応できる製品である事を確認して実施。

実験としては、色々な状態変化を捉える事が出来、成功かも知れませんが、太陽光発電所の運営となると、大きな損失となります。


(写真 3079・3080)

こちらの太陽電池メーカーとは10年保証がありましたが、切れる直前だったので、破損した太陽電池はすべて交換し、原因究明に利用致しました。

原因は、製造過程での給電部における最後のハンダ付けの面積不足で発生したと考えられます。現在では給電部分は増強されているようです。当然の事ながら、無償交換となっております。今回写真で紹介している太陽電池につきましては、常にメーカーの技術部と連絡を取り合い、状況変化の過程を観察しております。また、状況次第では、太陽電池の無償交換になると思われます。

多くの場合、同じロットで発生しますので、人的要因が影響しますので、人材育成には、努力しなくては良い製品が作り出せない事がここでも証明されています。

今回、PVJapan 2009をのぞいてみましたが、工場などでの、生産段階における太陽電池の不良を発見するシステムや器機を見て参りましたが、私が欲しい、太陽電池設置後の検査器機の展示が無かったのが残念です。

太陽電池の不良は、取り付け後の5年から、10年の間に発生することが、実際の系統連係をして、実際に発電を続けた私どもの発電所でわかっております。

私どもの発電所では、太陽電池パネルの枚数が多いので、一枚ずつの目視点検には時間がかかりますし、各回路のチェクにも多くの時間を必要とします。

太陽電池パネルの異常を出来るだけ早く、発見するには、毎日のデータを確実に取り、状況変化を見比べる事が出来るようにデータを整理しておく事が大切です。これらのデータを比較しながら、太陽光発電所の異常を発見し、発電所の異常が発生している回路を探し、異常な発電をしている太陽電池にたどり着きますが、太陽電池を一枚一枚EV曲線を計測するには、時間がかかりすぎるので、定期的に、ある器具を使用して、チェツクする方法が確実で正確な事が分かりましたので、ここで皆さんにお知らせ致します。

今回、紹介する方法は、サーモグラファーを使用する方法です。

皆さんは、インフルエンザの流行を阻止する為に、空港などで使用されたあのカメラです。発熱部分を探し出す事が出来ます。

器機が高価なので、一般向きではありませんが、レンタルもあるようです。

2社ほど介致します。

株式会社サーモグラファー.webloc
http://www.ir-shot.jp/index.html

とりあえず、この2社を参考に、基本的知識を得てください。また、ほかのレンタル器機を扱っている、最寄りのレンタル会社を利用する方法もあります。

画像により、太陽電池回路の異常や太陽電池の配線異常、配線の異常発熱など多くの情報を得る事が出来ます。

太陽電池の接続電圧により、レンジを変えて観測してください。

高電圧になれば、全体が発熱して、発見する事が出来ませんので、レンジ切り替えを忘れないでください。単結晶と多結晶でも見え方がすこし違うので、注意が必要です。特にアモルファスの場合は注意が必要です。

CISやCGISなどの太陽電池では、ホットスポット的見え方があり、面白いサーモグラファー模様を楽しむ事が出来ると思いますが、製造研究者には頭の痛い忘れられない模様に見えていると思います。

また、アモルファス太陽電池も独特の模様を描くと思われますので、機会があれば、サーモグラファーで覗いてみたいと思います。

経年劣化については、太陽からの光による劣化は、ガラスにはあまり影響が無いように考えられます。ガラス製造時に触媒として使った物の中には、太陽光に反応する物質があると思われますので、これからの注目点でもあります。

太陽電池そのものについては、分子的に安定していれば、多少の電子が降り注いだとしても変化は軽微な物と考えますが、大容量のエネルギーを持った電子が降り注いだ場合は、大きな太陽光発電所ほどダメージを受けやすくなると考えます。太陽電池そのものよりも、太陽電池を保護している仕材にこれからは劣化が訪れるのではないかと思っています。

今回は、拙い知識の中で、太陽電池の劣化等について、書いていますが、これらの事柄が、すこしでもこれからの太陽電池産業の発展につながる事を願っております。

浅川太陽光発電所
所長 浅川 初男
2009.08.13


追伸 2009.09.03】があります。引き続き、ご覧ください。

山梨県 大規模太陽光発電所建設へ (2009.02.09) | 同 追伸 (07.04) も併せてご覧ください。

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