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太陽光発電買取制度の問題点2012

浅川太陽光発電所  
所長 浅川 初男

今回の買取制度の最大のポイントと弱点は、経済的利益が簡単に読むことができる事である。


買取期間20年間40円+消費税(メガソーラー)と10年間42円(住宅用)がもとで、にわか太陽光発電事業が乱立し始めている。


家庭用などの分野では、裾野が広がり、消費電力量を減らす効果が上げられるが、買取制度を支える為に、太陽光発電を設置しない家庭も電気料金+出費が求められ、経済格差が生じ始めることになる。




本年度(H24)6月より、経済産業省が受付を開始したところ6月下旬から7月31日までの期間で認定した数は、太陽光発電だけで総数33,686件あり、如何に、狂乱しているか、その様子を伺い知る事ができる。


これらの中から認定件数は、10kW未満32,659件のうち、自家用発電設備併設が993件、一般住宅の設置数の多いのがわかると思います。


10kW以上1,027件、この内メガソーラーに関しては81件が認定されています。


認定総数33,686件に対して、申請総数はこれらの数倍有ったと言われています。


誰でもがメガソーラーを建設できるわけではなく、それなりの準備が必要になると言う事を自覚する必要があります。




経済性においては、収益の予測が容易ですが、10kW以上の物やメガソーラーについては、20年間施設運営できる会社であり、20年間運転可能なシステムである事が求められ、未だにその実績は未知数の産業である事を覚えていただきたい。


(私のところでさえ、太陽光発電を初めて、18年余りのうち、総出力50kW以上の運転経験は10年余り、その内70kW運転は6年)




北杜市にある北杜サイト太陽光発電所でさえも実験開始が平成19年8月、メガ発電を開始したのが平成20年3月、総出力の約2メガの運転経験は3年程度です。


安定経営をする為には、そこに存在する未知数の問題がある事を理解し、それらに対応できる能力が運営会社に求められるのです。技術的問題、用地問題、自然環境問題、電力会社との協議問題(これをパスしないと売電はできない)、不動産権利問題、税制問題等をクリアーして初めて大規模な太陽光発電が可能なのです。


技術的に言っても、太陽光発システムの要である、太陽電池寿命と補完しシステム(出力保障)の期間等についても、各社まちまちなので注意が必要です。


特に、メガソーラーになると、コスト問題から高い電圧で発電することになるので、太陽電池自体の寿命を縮める現象PID(突然の出力ダウン)が発生し易くなり、メーカーによっては、注意が必要になります。


例えば、設備を安く仕上げたが、運転期間が短年度でダウンした場合は、出資者や金融機関はある程度の打撃を予測できなくては商売にはなりません。保障期間内であってもメガになりますと、太陽電池の入れ替えを行う期間は、最大発電はできませんから当初の返済計画とは異なる場合がある事を理解する必要があります。また、使用している太陽電池を作る会社が存続しているとも限りません。


でも、20年間さしたる故障も無く、運転できるかもしれません。




未だに、未知数の発電産業が、今回の太陽光発電固定価格買取制度で急速に台頭してきているわけです。冷静に対応でき、リスク配分が均等にできるシステムを考える必要があると思われます。


住宅用に関しては10kW以下であれば充分な経験があるので、何ら問題は無いと思われます。


(市場動向をチェクし、正当な価格で購入する事を御勧め致します)


今回は、買取制度になっているので、基本的に設置者が全責任を負うことになりますので、設備等に不都合が有ったとしても設置業者責任にする事は、難しいのではと考えますので、心配があるのであれば、当初の契約時に設置業者と補償について、良く話し合いをする必要があると思われます。


(使用機器が外国製の場合は要注意)


大規模設置する場所においては、広大な土地を利用する場合があるので、景観や自然環境に配慮した設置が求められます。


(環境破壊や各法律や地域条例等に注意が必要)


また、大掛かりな太陽光発電所になればなるほど、地主や地権者等の契約条件や土地の持っている問題や、電力会社の送電網との接続問題などがあります。
送電網と接続点が近い場合は良いのですが、高圧線によっては、容量の関係から、接続点が遠くなり、送電線は発電事業者自身で引くことになるので、経済的に見合わない施設になる場合もあります。


(特別高圧の鉄塔の単価 例・66kVであると1km当り約1.4億円〜)




では、一般住宅に対してはどうでしょうか?


今回の、買取制度の概要を摘んでみました。




   2012「太陽光発電・新たな買取制度」について
  ※「再生可能エネルギー特別措置法」の考え方




買い取り価格
10kW未満、42円/kWh(税込)、10年、余剰配線(余剰売電)
10kW以上、40円/kWh(外税)、20年、全量配線(全量売電)
※余談
結果として、消費税が上昇すれば、10kW以上は消費税上昇分収入が増えることになる。




住宅太陽光発電設備認定の申請について
買取には設備認定(認定番号)がないと、系統連携が出来ません。


10kW未満は、JPECへ申請します。(インターネット使用)
10kW以上は、各地の経済産業局に設置者が申請。


「特定設備認定」がないと電力を買い取ってもらえない。
ID取得後、認定通知書を電力会社に提出して正式系統連系が可能になります。
(系統連系に関する決定権は電力会社が持っている※注意)




一般住宅用10kW未満の太陽電池は、JIS基準もしくはJIS基準に
準じた認証もしくはJET相当の認証取得が必要。
モジュール化(太陽電池パネル)後のセル変換効率は

シリコン単結晶(13.5%以上であること)



(写真 258)


・シリコン多結晶(13.5%以上であること)



(写真 253)


シリコン薄膜(7%以上であること)



(写真 257 アモルファス・タンデム)


化合物(8%以上であること)



(写真 255 CIS-90W)





(メガソーラーにはモジュールの変換効率に対する規定はないようです)




今回の買取制度は最長期間が20年と長い為、メガソーラーになると敷地等の取得や借地、電気事業法以外にも不動産関係の借地権や地上権等の権利問題があるので、注意が必要です。




一般住宅や、広い屋根をお持ちの方に対して、現在、広まりつつ有る貸屋根太陽光発電等の問題は、屋根に穴をあけ設置する場合は、特に注意が必要で、雨漏り等の問題の発生が予想でき、短期資本回収型なので、一定期間後は譲渡する契約が多いようであるが、譲渡後、雨漏りが発生して屋根全体を吹き替えるような事が無いように、日頃の点検が大切です。(貸屋根契約時に対策をしておく事が大切になります・長期の貸屋根の場合は権利発生があるので注意)


売電を行う以上、設備を有する方が、全責任を問われることになるので、注意が必要です。売電なので、事業収入となりますので、年間収入が一定額を超えた場合は、課税対象になりますので、一般サラリーマン世帯は特に注意が必要になりますので、確定申告を忘れずに。
(必要経費は認められます)


互いに良好関係を保つには、貸す側、借りる側、ともに、信頼できる相手である事を確認し、多角的に見て検討する必要があり、相互ともに経営体力がある事が求められるのが貸屋根方式と言っても過言ではありません。


多くの情報を発信したいのですが、営業マンとの契約をするような場合は、立会人や他社の情報や、信頼できる企業情報を集めて、納得の上での契約を御勧め致します。


一般住宅用太陽光発電設備にも関連してくるのですが、一カ所に複数の太陽光発電住宅が集中すると、その地域の電圧が高くなり、電気が流れにくくなります。消費する分には、さしたる問題は無いのですが、現在の配電網では売電がスムースにできなくなる懸念があります。


これを改善する為には、発電状況の確認が必要になります。パワーコンデショナーの発電状況や待機状況を確認してから、対策を電力会社に御願いすることになります。10kW以上の設備については、パワーコンデショナー自体の改善が必要となると思われますので、今後対策が必要になりそうなので、新規に太陽光発電所を開設する場合は各電力会社との協議時に内容をご確認下さい。


参考ギーワードとして「アンシラリーサービス」を上げておきます。




現在、私どもの所にも多くの方の問い合せ等がありますが、太陽光発電事業は本年度(2012)から本格的に始まると言っても過言ではないと思います。


多くの方が、事業として成り立つ事を確信していますが、産業として独り立ちするには、これからも多くの問題と、経済性を含んでおりますので、固定価格買取り制度がこのまま続くとは思いません。政府内部においては、急速に広がる太陽光発電ビジネスに苦言を呈しする見解も出ているのは事実です。


太陽光発電ビジネスが、長期に渡って育成できる産業構造が求められ、太陽光発電との組み合わせで、産業を育成する時代がすぐそこ到来してきているのかもしれません。



浅川太陽光発電所
所長 浅川 初男